血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)を解説します。

 

このページは、低ナトリウム血症の鑑別表の左上付近の解説となっています。
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

このページでは、
・低ナトリウム血症で血漿浸透圧を測定する意義
・なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか
という内容が分かります。

 

 

低ナトリウム血症全体を学びたい方は、こちらを参照ください。

 

 

まず、真ん中の部分、
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)
高タンパク血症や高脂質血症の部分から解説します。

 

 

偽性低ナトリウム血症では、測定方法が原因の誤差が起きている。
血液中のナトリウム濃度は、検査室で図る場合は、間接法という方法を採用しています。
これはどういうことかと言うと、
血液の中に、蛋白や脂質などの成分が7%含まれており
浸透圧を司っている「水や電解質の成分」は、残りの93%という考え方です。
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

 

蛋白や、脂質というのは、分子量は大きいのですが、つぶの数が少ないため
浸透圧物質にはなりません。(参考:血漿浸透圧のページ)
粒状層と水層というふうに名前分けをして、蛋白や脂質の成分は粒状層というように分けるのですが、
つぶとしての塊(油の塊のイメージが分かりやすいかもしれません)として考えます。

 

 

蛋白や脂質を除いた、水成分のなかでは、Na濃度は150-154mEq/Lほどとなり、
それを血漿全体での量に表すと、154*0.93=143mEq、だいたい140mEq近くとなります。

 

血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

なので、点滴製剤としての生理食塩水は、154mEq/Lとなっています。
水成分の濃度が、約154mEq/Lなので、それと同じなので生理的な溶液、
という考え方です。

 

 

では、この蛋白や脂質の成分がが増加したらどうでしょうか?
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)
例えば上の例ですと
154×0.85となるため、130.9と低値になってしまいます。

 

これが偽性の低ナトリウム血症です。
実際に、浸透圧は変わっていないですし、水部分のナトリウム濃度は変わっていないので、
細胞に対する水を引っ張る力は変化していません。
なので、症状もありません。

 

血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

 

実際に、蛋白や脂質がいくつ上がると、ナトリウム濃度はいくつ下がるか、という計算式もあり

TP1g/dL低下ごとに、血清ナトリウム濃度は1〜1.5mEq/L低下
TG460mg/dl上昇につき、血清ナトリウム濃度はmEq/L低下

となります。

 

 

この場合、血液ガス装置でのナトリウムの分析をすると、蛋白や脂質の影響をうけない測定をすることができます。
(測定方法が違うため)

 

偽性低ナトリウム血症は、特に治療対象にはなりません。

 

 

 

 

 

続いて、左の方の
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)
を説明しますね。

 

 

その前に、細胞内街の浸透圧について??という方は
こっちをみていただくと、わかりやすくなるとおもいます。

 

 

普段は、こういう内訳でナトリウム濃度が140mEq/Lで組成しているとします。
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

ナトリウムの公式の中では、血清ナトリウムを考える上で
ブドウ糖の浸透圧は無視できるくらいの小ささという話をしましたが、
例えば血糖900のような高血糖の場合は、浸透圧50となり、無視できない大きさになります。

 

 

 

高血糖やマンニトール等の血漿浸透圧を上昇させる物質が入ると、まずこのような状態になります。
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

細胞内と細胞外での浸透圧格差が生まれます。

 

 

そして、浸透圧により水の移動が起こります。
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

 

細胞内⇒細胞外へ水の移動が起こることにより
細胞外液に水が増えます。
そのため、血清ナトリウム濃度は低下します。

 

血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)

 

 

この場合、特に
血清浸透圧=2Na+血糖/18+BUN/2.8の項目にない
マンニトールなどの物質の場合は、
計算の浸透圧と、実測の浸透圧の間に誤差が生じます。

 

 

血清ナトリウムとブドウ糖の関係は

血糖が100mg/dl上昇するごとに、血清ナトリウム濃度は1.6mEq/L低下する

とされています。

 

 

高浸透圧の低ナトリウム血症の場合の症状
こういう状態を、高浸透圧の低ナトリウム血症とよぶのですが、
この場合は、低ナトリウム血症の原因となる、細胞内の浮腫が起こりません。
ですので、これによる自覚症状はありません。

 

また、この状態は、高血糖なら高血糖の治療を行えば(原疾患の治療を行えば)
自然に改善してきますので、低ナトリウム血症自体に対する治療も不要です。

 

 

 

ということで、
血漿浸透圧と低ナトリウム血症(なぜ生理食塩水は154mEq/Lなのか)
に対する解説は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

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