セフェム系の抗菌薬
セフェム系の抗菌薬はもっとも使用頻度の高い抗菌薬ですが、きちんと使い分けできていない方もいる抗菌薬です。
ここでは、セフェムのことを少し知り、使い分けられるよう、「なぜこれにしているのか」をわかるように考えていきましょう。
セフェムの分類ー世代という考えー
セフェム系の抗菌薬は、世代が進むにつれてグラム陰性桿菌へのカバーを強めようと試みられています。
陰性桿菌へのカバーは広がっていきますが、陽性球菌への効果が弱まっていきます。
世代ごとにわけると、以下のようになります。
<第一世代セフェム>
・第一世代セファロスポリン
<第二世代セフェム>
・第二世代セファロスポリン
・第二世代セファマイシン
・第二世代オキサセフェム
<第三世代セフェム>
・第三世代セファロスポリン
・第三世代オキサセフェム
・抗緑膿菌用セファロスポリン
・β-ラクタマーゼ阻害薬入りセファロスポリン
<第四世代セフェム>
・第四世代セファロスポリン
それぞれの一般名と、略し方を載せます。
第一世代セフェム
レジデントのための感染症診療マニュアル
の前半部分が読みやすく、わかりやすいです。
第1世代セフェムは溶連菌、黄色ブドウ球菌(MRSAを除く)などのグラム陽性球菌と、
「PEK」と呼ばれるグラム陰性桿菌に有効です。地域にもよりますが、約50%程が耐性を持っています。
Proteus mirabillis
E.coli
Klebsiella pneumoniae
プロテウスミラビリス・大腸菌・クレブシエラのグラム陰性桿菌たちに効果を持っています。
これら第一世代が効きうる菌たちは尿路感染などで多い菌です。
そのため、尿路感染で感受性が出たときの「De-escalation」の選択肢として考えることができます。
尿路感染では、解熱後48時間後ごろから内服薬への切り替えを考慮しますが、このころがちょうど感受性結果が出るころです。
第一世代のセフェムの内服薬「セファレキシン:ケフレックスR」はバイオアベーラリティも90%と良好なこともあり、尿路感染後の内服薬への切り替え選択肢の一つとして有用です。
また、ペニシリンGやアミノペニシリンと違い、MSSA(ブドウ球菌)への感受性もよいため、合併症のない患者の蜂窩織炎にも利用されます。蜂窩織炎はブドウ球菌と連鎖球菌が多いためです。
セファゾリンの問題点としては、髄液移行性が良くない点です。
髄液に関しては、すべてのセフェム系での移行性が良いわけではなく、むしろ基本的に第三世代以上のセフェム系しか移行しないと考えて良いです。そのため、感染性心内膜炎患者さんで脳膿瘍などを起こした際には、セファゾリンでは治療しきれないことに注意が必要です。
第二世代セフェム
第二世代セファロスポリンは、少しグラム陽性球菌への効果が落ちているかもですが連鎖球菌とMSSAをカバーし、
それに加え第一世代がカバーしていたグラム陰性桿菌の
Proteus mirabillis
E.coli
Klebsiella pneumoniae
をカバーします。に加え、
Hemophillus influenzae
Enterobacter spp.
Moraxella spp.
に効果があります。
HEMPEKと覚えます。
肺炎や尿路感染などに使用します。
第三世代セフェム
第三世代セフェムは、肺炎や尿路感染で現在かなり使われている薬剤です。
緑膿菌などには効きませんが、かなり多くのグラム陰性桿菌に有効です。
髄液移行性もよいです。
CTRX(セフトリアキソン)は腎機能障害での容量調整も不要で、肺炎や尿路感染でも大体カバーするため、とりあえずCTRXというノリで使用されることが多く、実際に治ります。しかし、感染症の万能薬ではないですしこの薬しか使えないようでは困りますので、しっかりと他の抗菌薬も覚える必要があることを忘れないでください。
セフタチヂム(CAZ)は、第三世代セフェムですが緑膿菌にも効果があります。
第四世代セフェム
第4世代セフェム=第1+3世代と考えます。ESBLなど高度な耐性がなければかなりの菌に効きます。緑膿菌にも活性があります。セフェピム(CFPM)
はじめから緑膿菌を治療しなければいけないような発熱性好中球減少症などの感染症に対して用いられます。
セフェム系の抗菌薬は、日本で最も頻用される抗生剤です。
第1〜4世代まであり、世代が進むにつれてグラム陰性桿菌菌へ活性を獲得するに至っています。
よく使う薬であるがゆえに、しっかりと使い方・使い分けを覚えましょう。