採血の読み方
では、この採血検査を見てみましょう。
採血には、大きく3つの読み方があります。
@異常値を見つける
Aなぜその検査結果になっているか考える
B症例に合わせて、読みべき所をしっかり読む
私はこの中で、Bをするように心がけています。
・・もちろん、偶然に見つかるような異常値もあって、
それはしっかりと解釈をするのですが
それだけではなくて、しっかり採血も読めるようになると
臨床が面白く成りますよ!
では、この患者さん
意識消失発作にて来院した、80歳女性
の場合は、まず、失神なのか痙攣なのかを見たいので、
検査所見としては、まず
血ガスと筋原性酵素の変化を見ます。
痙攣であれば、無酸素運動をした時のように乳酸が貯まり
乳酸アシドーシスになるため、アニオンギャップ上昇している代謝性アシドーシスになります。
また、AST/LD/CK値が上がる場合があります。
(ただし、多くの患者さんが意識消失発作直後に来院するので、まだ採血結果ではそれらの数値が上がっていない可能性があります)
では、ガスを見てみましょう。
@STEP1
pH<7.4なので、アルカレミア
ASTEP2-代謝性なのか呼吸性なのか
CO2<40のどちらか、とみると HCO3>24なので
呼吸性アルカローシス
@STEP3-アニオンギャップを計算する
アニオンギャップは
Na-Cl-HCO3なので
134-102-22.6=9.4
アニオンギャップの開大はなし
@STEP4-代償の範囲内かどうか
説明がながくなるので、端折ります。
ここまでで、呼吸性アルカローシスがあることがわかります。
また、アニオンギャップ上昇の代謝性アシドーシスがないことがわかります。
ここで、呼吸性アルカローシスをみたら、必ずしてほしいことがあります。
それが、A-aDO2の計算です。
A-aDO2の計算は
A-aDO2=(760×FiO2)-pO2-CO2/0.8
です。
FiO2とは、酸素分圧なので、普段の室外気(room airの場合は、
大体は150で計算します。
150-pO2-CO2/0.8
ですので、A-aDO2150-59.1-32.3=58.6
になります。
A-aDO2の正常値は
年齢÷4+4なので
80歳÷4+4で、24になりますので、
この患者さんではA-aDO2は開大しています。
AaDO2の開大としては
拡散低下(肺線維症、肺気腫、肺炎、肺水腫)
換気血流不均衡 死腔(肺血栓塞栓症) 無気肺(肺内シャント)
右左シャント(Eisenmenger、肺動静脈ろう)
などですが、失神の原因として見落としてはいけない疾患に、肺塞栓症があります。
なので、失神の患者さんでA-aDO2開大を見たり
頻呼吸を見たり、呼吸数の割にSpO2が高くない場合には、
肺塞栓症の可能性を考えることが重要です。
ただし、前例が血ガス異常がでるわけではなく、
・14〜38%はPaO2もPaCO2もAaDO2もすべて正常、という報告や
・PaO2が80Torr以上やPaCO2が20Torr以下でも肺塞栓症は否定できない!
と言われているため、血ガスが正常だからと否定することが難しいことは要注意ですが
実際には非常に参考になるので、是非分析してみましょう。
