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便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法

低ナトリウム血症の実際の治療方法の1つを紹介します。

 

 

この方法だと、
電話対応やスケール対応で治療することも可能で、
夜中にもメニュー調整がしやすい方法になります。

 

かつ、水中毒以外の患者さんでは殆ど対応できますし、
安全に調整することができるようになります。

 

 

まず、メニューから説明します。

 

用意するもの

 

ブドウ糖500ml 

 

生理食塩水250ml 
10%塩化ナトリウム20mlを3本

 

事前に入手しておく情報

 

体液量が多いか少ないか(予測する)
尿中ナトリウム
尿中カリウム

 

2.66%の生理食塩水を作りましょう。
生理食塩水250ml 
10%塩化ナトリウム20mlを3本で、、塩分としては
2.25g+6gで、8.25gの塩化ナトリウムと
310mlの水となるので、
2.66%の食塩水ができます。

 

 

便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法

 

 

 

これを使って、低ナトリウム血症の補正を行います。
(2/66%にこだわる必要はなく、3%にしても良いです)

 

 

 

STEP1 まず、塩を入れる量を決めます。

 

間違えやすいこととして、3%生食を流しておけばナトリウムの濃度が上がる
と考えて、3%生食を大量に投与して、溢水になったりすることがあります。

 

 

原因は、食塩の入れすぎです。
3%生食を500ml入れると、15gもの塩化ナトリウム負荷になります。
もっと入れれば、もっと負荷は増えます。
それでは溢水になってしまいますよね。

 

 

そうなってはいけないので、まず塩の量を決めます
塩分の考え方としては、体液量を増やしたければ塩分を増やして
体液量を減らしたければ塩分を減らせば良いです。
http://kensyui.com/entry8.htmlを参考にして下さい。

 

 

ですが、低ナトリウム血症の場合は、溶質を多く入れれば入れるほど
ナトリウム濃度が上がりすぎてしまったりという変動が大きくなります。

 

 

なので、大体3-6g以内くらいであれば、患者さんがどの体液量でもある程度コントロールしやすいと思います。

 

 

では、2.66%の食塩水であれば、どれくらい入れるとよいでしょうか。

 

 

となると、8ml/hで投与すると、192ml/dayとなるので、
192×2.66%で
5.10g/日の塩分負荷になります。

 

ちなみに、
7ml/hでは4.46g/日
6ml/hで3.83g/日
5ml/hで3.19g/日になります。

 

 

便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法

 

 

 

STEP2 ブドウ糖(自由水)の投与量を決めます。

 

SIADHでもそうですが、血清ナトリウムを考える上で、尿の濃さを考えることが重要です。
参考:http://kensyui.com/entry22.html

 

なので、尿よりも濃く、血清ナトリウム濃度よりも濃く投与すれば、ナトリウム濃度は上昇します。

 

 

その考えで、このページでの方法は、ブドウ糖の初期投与量は
尿ナトリウム+尿カリウム濃度をつかって計算します。

 

 

計算式
(入れるNa+K)÷(尿ナトリウム+尿カリウム)

 

 

尿ナトリウム濃度:80mmol/L
尿カリウム濃度:20mmol/Lの患者さんの場合で計算すると

 

5.1gの塩化ナトリウムは、86.7mEq(=86.7mmol)
なので、86.7÷(80+20)=0.867L

 

つまり、867mlの水分を摂取すると、
尿と入れる量の差し引きはトントンとなり、濃度は上がらないと考えられます。
これよりも水分を制限すれば、濃度は上昇します。(これが水制限の考え方です)

 

 

ただし、人の体は、便や不感蒸泄で、ナトリウム濃度は上がってくるように出来ていますので、
不感蒸泄を利用すれば、点滴と尿をトントンにしておけば自然に上昇していきます。

 

 

なので、初期量としては、まず867ml分、投与することにします。
飲水したいなどの希望があれば、その分は差し引いていきます。
(特にSIADHでは、ADH分泌による口渇が出現することが知られています)

 

食塩水分で192ml使用していますので、飲水300mlとすると、
867-192-300=375mlをブドウ糖で投与することとなります。

 

 

375mlのブドウ糖を24時間で投与していきます。
15.625ml/hですね。

 

便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法

 

 

 

STEP3 投与と調整。

 

では、実際に上記のメニューで開始したら、濃度が上がっていくかを確かめます。
24時間で8以下の上昇に抑えよう、と思う場合は、何時間後にいくつかな?という予定を立てておきます。

 

尿は実際にはずっと同じ濃度ではなく、
濃くなったり、薄くなったりするわけなので、調整が必要です。

 

 

実際に何時間後かに採血をしてみて、ちょうど良い範囲内に上昇していけばそのままで行けば良いですし
濃度が下がってくるようなら、ブドウ糖の速度を落とせば調整できます。
濃度が上がりすぎてしまっているときは、ブドウ糖の速度を上げれば良いです。

 

 

2.66%の食塩水単独なら、ほぼ間違いなく濃度は上昇していくので、上昇幅とい手綱をブドウ糖でとる、というイメージです。
イメージ
便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法

 

 

 

 

 

STEP4 スケールを立てておく

 

SIADHの場合、上記のメニューは、上昇幅を抑えることを目的としているため、溶質は非常に少ないです。
そのため、尿量はしばらくとても少なくなります。

 

SIADHの場合には、入れた溶質に対して尿量が決まるため
尿が沢山出始めたというような状況は、 SIADHが解除されているような状況を考えなければいけません。
なので、ナトリウム濃度が上がりすぎる可能性があります。

 

尿量のスケールを立てて、例えば8時間で500ml以上出ているという場合は教えてもらえるようにしておくとより安全です。2時間で100とか、もっと安全になるように細かく設定しても良いです。

 

 

 

 

というのが、
便利で安全な低ナトリウム血症の治療方法
になります。

 

 

ただし、このメニューではカロリーは入らないので、そこは欠点として認識しておいて下さい。
ただ、調整しやすく、ナトリウム濃度調整に慣れていない方でも安全に出来る方法だと思います。

 

 

一番大きなメリットとしては
ブドウ糖5%(自由水)の投与速度だけで濃度調整ができるので、採血を見ながら微調整がし易いという点です。点滴を繋ぎ直す手間もないですし、指示を変更するだけで投与濃度を微調整、自由水総量を微調整できるため便利です。

 

 

 

例えば、SIADH状態が解除され、自由水が排出されるようになったら、2.66%の食塩水を中止しブドウ糖投与だけにすれば自由水だけを投与しているのと同等になりますし、ブドウ糖の投与速度を調整すれば1/2生食や1/3生食というような濃度に即座に調整できます。

 

例えば、この方はHypovolemiaに伴う低ナトリウム血症で、補液をしていくと尿が希釈されるな、と心配な場合も、希釈されたら指示変更だけで濃度を再調整できます。また、SIADHで思ったようにいかない場合も、投与量の微調整がしやすくなっています。

 

 

まとめ

 

 

用意するもの
ブドウ糖500ml+2.66%食塩水(生理食塩水250ml +10%塩化ナトリウム20mlを3本)

 

食塩水は8ml/hで開始(体液量に合わせ調整)
ブドウ糖は、食塩量÷(尿中Na+K)
補正速度を採血で調整(ブドウ糖(自由水)を増やす・減らす)

 

 

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実際の低ナトリウム血症の患者さんを考える上で役立つナトリウムの公式です。

 

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