塩分制限と水分制限のどちらが大事か
塩分制限と水分制限のどちらが大事か
というお話をします。
心不全や腎不全で、
塩分制限を、という先生と
水分制限を、という先生と
両方います。
どちらが大事かというと、塩分制限の方が重要です。
塩分を取ることで、浮腫んだり、肺水腫になったりするのです。
それがわかると、分数で考える体液量の。なぜ分子の
【ナトリウムの量】が【有効循環血液量】に相当するのか、ということも分かります。
では、まずあなたに質問です。
□今まで、歩いてきた意識のある高ナトリウム血症の患者さんをみたことがありますか?
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・・・私は今のところ一人しかみたことありません。
出会ったことのある人は、めったにいないと思います。
というのも、人は、高ナトリウム血症になると
口渇が出てきます。(我慢できないくらい喉が渇く)
結果、水を飲むようになり、濃度が一定に保たれます。
具体的には、
Naが上昇し、血清浸透圧の上昇すると
280mOsm/L以上でADHが分泌が刺激され
295mOsm/L以上で強い口渇刺激が起こります。
これらにより、
腎臓での水の再吸収の亢進が起こり、水を増やそうとします。
また飲水によって、外からの水の取り込みが起こり
濃度が一定になるように調整されます。
ですので、高ナトリウム血症って意識があって自分で水が飲める人は
基本的に高ナトリウム血症にならないんです。
実際に高ナトリウム血症になるのは、
自分の意思で飲水が出来ないような人(高齢・小児・精神疾患)
というような、自分で水を飲んだりできない人にしか起こらないです。
(口渇中枢が無くなってしまった場合は、その限りではありません)
それを踏まえて、
それ(ナトリウムを取ると体液量が増える事)を分数で表してみましょう。
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分数で考える、塩分を取りすぎた時
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ナトリウムが少ない 0 ←→ 10 ナトリウムが多い
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水が少ない 0 ←→ 10 水が多い
5
-----
5
を理想的な体液量・理想的な濃度としたとき
5
---
5
の状態から、塩分を沢山摂取したとします(ナトリウムが増えます)
5 7
----- → ------
5 5
と一見なりそうです。
しかし、自分で水が飲める人は、この高濃度の状態に耐えられないので
飲水をします。
5 7 7
--- → --- → ---
5 5 飲水 7
というようになり
7
----
7
となり、体液量が増加します。
これを、体の外に出していくのが難しい人(腎不全・心不全等の患者さん)は、
むくみが出てきたり肺水腫になったりします。
ということで、分子の決め方
ナトリウムが少ない 0 ←→ 10 ナトリウムが多い
は、体液量が多いか少ないか、で決めていきます。
なので、
(その患者さんが排出できる以上に)塩分を取りすぎるから
濃度が上がって、飲水して、体液量が増えて、浮腫むのです。
浮腫んだりしないようにするためには、塩分制限が大事です。
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