ペニシリンを覚えよう。

ペニシリンを覚えよう。

感染症診療を学んでいくときに、取り掛かりで勉強するべき抗生剤(抗菌剤)が

 

「ペニシリン」 と
「セフェム」 系の抗菌薬です。

 

ぺニシリンは世界最古の抗生物質で、昔はグラム陽性、陰性かかわらずほとんどすべての菌を倒すことができました。
そういう歴史的な重要さもありますが、抗生剤の勉強で大事なのは、広域範囲の狭い抗生剤を適切に、かつ意義を持って使い分けられることが重要です。

 

そのためにも、ペニシリンを使い分けられるように、使えるようにしておくことはとても重要なことです。

を見ると、クリアカットに理解できます。

 

 

ペニシリン系薬剤の分類

 

ペニシリンは、5つに分けて考えます。

・ペニシリンG
・アミノペニシリン
・黄色ブドウ球菌用ペニシリン
・抗緑膿菌作用をもつペニシリン
・β-ラクタマーゼ阻害薬入りペニシリン

 

 

ペニシリンG-元祖のペニシリン

 

ペニシリンGは、球菌に強い抗菌剤になります。
グラム陽性球菌・陰性球菌に効きやすいです。
しかし、ブドウ球菌はペニシリナーゼと言う酵素を出しペニシリン耐性が多く、90%近くがペニシリン耐性です。

 

ペニシリンGのスペクトラム
<グラム陽性球菌>
 ・ 連鎖球菌
 ・ 腸球菌

 

<グラム陰性球菌>
 ・ 淋菌
 ・ 髄膜炎菌

 

<スピロヘーター>
 ・ 梅毒
 ・ Lyme病
 ・ レプトスピラ

 

<その他>
 ・ 横隔膜上の嫌気性菌
 ・ 放線菌
 ・ 鼠毒

 

 

 

アミノペニシリン

アンピシリン(静脈投与)・・ABPC
アモキシシリン(内服)・・・AMPC
があります。

 

グラム陰性桿菌にスペクトラムを広げようとした薬ですが、実際には僅かに広がった程度のスペクトラムしかカバーしていません。
経口摂取するときに、胃酸でも安定しているため、吸収の良い薬剤です。

 

アミノペニシリンのスペクトラム

<PCGと同様のスペクトラム>

 

<グラム陰性桿菌>
 ・ 大腸菌(E. coli)
 ・ インフルエンザ桿菌(H. influenzae)

 

<グラム陽性球菌>
 ・ 連鎖球菌
 ・ 腸球菌

 

<グラム陽性桿菌>
 ・ リステリア(Listeria spp.)

 

がカバーされています。
高齢者の髄膜炎のガイドラインでは、リステリアをカバーするためにABPCが入っています。

 

グラム陰性桿菌の一部にも効果がありますが、E. coliやH. influenzaeなどは耐性も多く、感受性を確認する必要があります。抗菌範囲が広くないことを利用し、de-escalationに利用することができる薬剤です。

 

 

アミノペニシリンと皮疹
伝染性単核球症の患者が有名ですが、それ以外にも、慢性リンパ性白血病:90%・アロプリノール治療中:15-20%というように、皮疹の出現に注意が必要です。

 

 

 

 

緑膿菌作用をもつペニシリン

 

ピペラシリン(PIPC)は、緑膿菌にも効くペニシリンです。
アミノペニシリン+グラム陰性桿菌+嫌気性菌などに効果があります。

 

日本の添付文書では、「 1日2〜4g(力価)を2〜4回に分けて静脈内に投与」と記載されていますが、サンフォードには3〜4gを4〜6時間ごと、と記載されており、量が全然違います。

 

一般的に、日本の添付文章の量は適切な抗菌薬の量としては少なすぎる場合があります。
といっても、海外の容量のまま使用すると査定されることがあるので難しいところです。しかし、すくないということは覚えておく必要があります。

 

 

 

β-ラクタマーゼ阻害薬入りペニシリン

β-ラクタマーゼを出して耐性を形成している細菌に対して,効果を発揮するように作られた抗菌薬です。

 

 

ペニシリンを覚えよう。
グラム陽性菌+グラム陰性桿菌※+横隔膜上下の嫌気性菌に効果があります。
緑膿菌活性のあるPIPC/TAZの組み合わせでは、緑膿菌にも効果があります。

 

 

 

 

ペニシリン系薬剤の臓器移行性

 

・ 移行性が良い臓器
関節液
胸腔
心膜腔
胆汁
・ 移行性が悪い臓器
前立腺
眼球
脳実質
・ 移行性が場合による臓器
- 髄液(炎症があれば移行性は良くなる)

 

前立腺などは臓器移行性が悪い臓器である。
たとえば前立腺炎では、炎症が強い初期には前立腺へ移行するため効くことはあり、治療しきれることもあるが、
臓器移行性は悪いため、前立腺炎の炎症が改善するに連れ効果が薄れ、治しきれなくなる場合がある。

 

 

 

 

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