失神なのか痙攣なのか
この解説は、
http://kensyui.com/case.html
の患者さんの例にした問題の解説です。
ここにももう一度書くと、この症例です。
まず、この患者さんが来院した時、まず考えるべきことは
【失神】なのか、【痙攣】を起こして意識消失を起こしたのかを判断することです。
痙攣発作は、複雑化して意識障害を起こした場合、痙攣発作が収まると
意識が少しずつ回復し、意識が改善して【一過性】の意識消失発作となることがあります。
その場合、病歴としては
・【痙攣】があったかどうかを聞くこと と
・【その後の意識障害の改善の仕方】が重要です。
【その後の意識障害の改善の仕方】というのは、
失神の場合は、意識が一時的になくなっても、もとに戻るとすぐに意識が元通りになりますが
痙攣の場合は、意識の改善速度がゆっくりで、少しずつ戻ってきます。
post-ictal state
敬遠発作後の朦朧とした状態を、post-ictal stateといいます。
これを特に注意して聴取しましょう。
痙攣を起こしたときには救急外来では痙攣後昏睡から徐々に回復していくところに携わるので
その前に関わった人(目撃者や救急隊の方)から聞く意識変動の評価は重要になってきます。
典型的?には、痙攣の目撃があって、救急車を呼んで待っている間に少しずつ意識が改善して
救急車内で少しずつ意識が改善し指示動作に従えるようになって
救急外来に運ばれて来る頃に意識が普段通りにに近くなってきて、というような経過です。
また、次にHistorical Criteria という指標があります。
情動的ストレスとは無心没頭・気分変化・幻臭などで 、こういった症状が発作前にある場合は痙攣の可能性が高いと考えられています。
この表は感度94%、特異度94%という報告で、痙攣っぽいか失神っぽいか鑑別する指標になります。
身体所見ではまずABCを評価して、バイタルや全身状態を評価します。
一過性意識障害に伴って起こる外傷探しを忘れてはいけません。
失神は頻脈も徐脈も起こりえますが、痙攣後はほとんどが頻脈となります。普段の脈の3割り増しですので大体100は超えています。ちなみに頻脈で起きる失神はVTなどの心原性不整脈以外では肺塞栓と出血にを疑う必要があります。
舌の側面の咬傷は、痙攣に特異度の高い症状です。
痙攣中は、舌は一方側にぐーっとよって、かみ傷を作るので、
Clonic phaseに舌咬傷は起こると言われています。
失神でも舌の咬傷ができることはありますが、コクンと頭が落ちるときに舌を咬むので、舌先を咬むことが多いです。
この症例では、失神っぽい病歴なのですが、頻脈なので
肺塞栓症や出血の可能性を考える必要があります。
ということで、この症例で結構大事なことは、
失神ぽい病歴で、【頻脈】であることです。