有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

このページでは、有効循環血漿量減少を伴う低ナトリウム血症の治療について解説します。

 

体液量の評価の仕方は、こちらのページで解説しています。
また、分数で考えるNaの講座というページに書いていますが、分数で言うと

 

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
というような、ナトリウムも水分も共に不足している低ナトリウム血症の患者さんに対する治療になります。

 

 

そういった方を治療する上で、
大事な点がありますので、まずそれを抑えましょう。

※なぜ低ナトリウム血症になるのかを考えてみよう。
※2つのADH分泌刺激を知ろう
※急激にナトリウム濃度が上昇する可能性があります。

 

 

では、解説します。

 

なぜ低ナトリウム血症になるのかを考えてみよう
まず重要なことは、なぜ、有効循環血漿量減少している方が低ナトリウム血症になるか
を考えてみることです。

 

 

 

普通の人が血清ナトリウム濃度が低下した場合、
通常の体液量の際には、ADH分泌はこのようになります。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

このように、血清ナトリウム濃度が低下すると
ADH分泌が減る⇒(体の中にに水を再吸収する)抗利尿ホルモンが作用しない という流れで
薄い尿が出ていき、血清Na濃度が元に戻っていきます。

 

 

 

しかし、体液量減少・増加している際には、体液量にともなってADH分泌が変動します。
ココが重要です。

 

 

では、有効循環血漿量減少している患者さんでのADH分泌刺激を見てみましょう。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

このように、ADHが分泌されやすくなってきます。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
体液量が足りないので、せめて水だけでも再吸収をしようという反応と思ってもらうとよいでしょう。

 

実際に、ADH分泌は、下記のように有効循環血漿量減少による刺激を受けます。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

(このあたりは、medicina2014の2月号にもわかりやすく記載されています。)

 

 

 

 

さて、ここで、少し話は変わるのですが、
有効循環血漿量減少の低ナトリウム血症を考える上で重要な点を解説します。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
この表は、AKI(Acute kidney injuly)の際に、腎前性の腎不全となっていないか、という参考になる検査の表です。
強調したいのは1点で、有効循環血漿量減少すると、尿中Na排泄は一般的に低下する方向に行くということです。

 

 

尿でのNaの再吸収が亢進している
尿での水の再吸収が亢進している

 

 

この2点の認識が有効循環血漿量減少を伴う低ナトリウム血症では大事なのです。

 

 

 

さて、では、実際にどのようなイメージか、以下に図式していきます。
〜体液量減少の低ナトリウム血症が完成するまで〜

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

下痢や汗、利尿剤過多などで、体液量が減少します。
しかしこの時は、濃度はあまり下がっていないことが多いです
(サイアザイドを除き、血清Na濃度より濃い体液量の喪失はあまり起こりません)

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

そうすると、冒頭でお話した

尿でのNaの再吸収が亢進
尿での水の再吸収が亢進

によって

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
結果、尿量が低下します。

 

 

 

 

 

そして、その次に、水分を摂取することによってナトリウム濃度が低下します。

 

 

体の中に入る水分というのは、多くは低調です。
(大体ラーメンで生理食塩水くらいの濃度)
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

 

なので、低調のものが入ると、このような図になります。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

結果、濃度が下がります。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

 

 

この時に、入ってきた水の方がが多いと濃度が下がるのですが、
有効循環血漿量減少によるADH刺激が亢進している状態ですと
この水を排泄することができません

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

結果、有効循環血漿量減少による低ナトリウム血症が完成します。

 

 

 

 

 

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

その前提を知った上で、補正の方法を考えてみましょう。

 

※なぜ低ナトリウム血症になるのかを考えてみよう。
※2つのADH分泌刺激を知ろう
※急激にナトリウム濃度が上昇する可能性があります。

 

現在、ナトリウム濃度を下げる原因となっているのは
・尿量が低下していること
・ADHが分泌されていること
この2点です。

 

 

なので、体液量がある程度補正されるまでは、その状況が続きます。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

 

その時には、血清ナトリウム濃度よりも高い濃度で投与すれば、
基本的に血清ナトリウム濃度が下がりません。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

ですが、体液量が改善した場合にどうなるかと言うと
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
ADHの分泌が低下し、出なくなっていきます。

 

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
こうなったタイミングで、
生理食塩水を大量に投与していたり
高張食塩水を投与していたりすると

 

ナトリウム濃度が上がりすぎてしまいます。

 

 

 

例をあげます。
今、こういう状態の方が居るとします。

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

それに、点滴をします。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

 

ナトリウム補正の公式を使って予想すると

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

127くらいかな?となるのですが、
ではその状況で、もし補液中に尿が出たらどうなるかを考えると
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療

 

 

濃度が急激に上がりすぎてしまいます

 

 

 

ここが重要です。

このタイミングが、
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療で
一番失敗するタイミングです。

 

 

 

 

低ナトリウム血症の治療失敗の原因と対処方法

 

結局は、有効循環血漿量減少がなぜ低ナトリウムになるか
・尿量の低下
・ADH分泌の低下
の2つが原因で、この原因は点滴投与で改善してしまうのです。

 

 

そうすると、低ナトリウム血症自体が、その人の人体の調整力で自然に改善してしまい
そのペースが早くなってしまいすぎるということです。

 

 

なので、私の場合は、

@そもそも生食は入れない
A尿が出始めたらDr callもらえるように指示
B尿が出始めたら、輸液の速度を落として採血をこまめに

という方法で対処しています。(これはあくまで私の場合)

 

 

それを解説します。

 

@そもそも生食は入れない。
ナトリウム濃度が上がりすぎてしまうのは
尿Na+尿Kよりも濃い輸液を沢山することが原因です。
参考:http://kensyui.com/entry22.html

 

点滴の目的も
「体液量の補正」が目的なので
生食よりも少し薄く、現時点での血清Na濃度よりも濃ければ問題ありません。
リスクヘッジのため、やや薄く(私の場合は、ほぼ血清Na濃度と等濃度にしてます)
ということをしています。

 

 

 

A尿が出始めたらDr callもらえるように指示
尿量が出始めた時に、ナトリウム濃度が上がりすぎてしまうので
そのタイミングを教えてもらえるようにしておきます。
どれくらい、というのも指標が難しいですが
私の場合は、8時間で500ml以上でるようなら、上がりすぎるかもと思って
点滴の速度をかなり緩めるか、点滴のナトリウム+カリウム濃度を下げています。

 

 

B尿が出始めたら、輸液の速度を落として採血をこまめに
AとBは、指示簿という形で一緒にやってしまうことが多いですが
尿が出始めたら、慎重になる、という姿勢が重要です。

 

 

長々となりましたが、1つのグラフでまとめるとこんな感じです。
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療
有効循環血漿量が減少している低ナトリウム血症の治療では
上の瞬間を気をつけましょう。

 

 

 

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