高血糖の患者さんに出会ったら
糖尿病患者さんのの倦怠感・食思不振・腹痛・下痢・発熱・嘔吐などを見た時には、必ず血糖値を測定しましょう。
そして、高血糖の中でも、
高血糖高浸透圧性昏睡(HONK)
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
の鑑別が重要になります。
高血糖高浸透圧性昏睡(HONK)とは
血糖値が極めて高いために浸透圧性に利尿が亢進して体液の喪失を招き昏睡に至ります。
疫学:2型糖尿病に多い
HHSの50%以上が糖尿病の既往がなく、初発であることが多い
特に高齢者に多い(視床下部の浸透圧中枢が低下が要因)
70歳代の高齢者がピーク
認知症や一人暮らしで水分補給が上手くできない状態は、高いリスクとなる。
病態:インスリンが相対的に不足
脱水が著明→インスリンが緊急に必要ではない
→脱水の改善が重要となります。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは
概念:1型糖尿病で多い
インスリンが全く不足しているため、糖の利用ができず、
ケトン体蓄積によるアシドーシスでしばしば昏睡にまで発展します。
初発症状の半数近くを占め、
1型の若者でインスリンの中断も、多くの原因となりまうs.
DKAの20〜30%にDMの既往がなく、初発でDKAを発症しています。
2型糖尿病でもDKAは生じることがあり、長期間の2型DM治療で膵β細胞の疲労などが原因になります。
絶対的インスリン不足
→細胞内にグルコースを取り込めない
→高血糖で細胞内飢餓
→脂肪分解
→ケトン体産生
→ケトアシドーシス
症状:昏睡 倦怠感 悪心および嘔吐 腹痛 低体温 Kussmaul呼吸
(早く深い呼吸で、呼気はケトン体による果実様の芳香を放つ)
著明な脱水:著明な高血糖により浸透圧利尿が亢進して脱水をきたします。
循環血液量の減少→低血圧→代償性に頻脈
代謝性アシドーシス 高カリウム血症 高浸透圧
というような症状を起こします。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧性昏睡(HONK)の比較・鑑別
DKA |
HHS |
|
---|---|---|
糖尿病の型 |
1型 2型でも清涼飲料水多飲 |
1型 |
年齢 | 若年に多い |
高齢者に多い |
症状
|
嘔吐・腹痛の消化器症状あり
|
脱水症状 神経症状 |
誘因 |
1型糖尿病でのインスリン不足 2型糖尿病での急なインスリン抵抗性の上昇 |
脳血管障害・高齢者など 口渇感を訴えにくい状況での経腸栄養・高カロリー輸液・ステロイド投与 |
病態 |
インスリン不足 (絶対的or相対的) |
高度な脱水 (内因性インスリンは保持されている) |
尿ケトン体
|
陽性 |
陰性〜弱陽性 |
血糖値 |
高値 (300〜1000mg/dl) |
著明高値 (800〜1000mg/dl以上) |
Na | 正常〜軽度低下 |
上昇 |
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧性昏睡(HONK)で重要な3点
D
K
A
とおぼえます。
D(血糖)
K(カリウム)
A(アシドーシス)
をチェックしましょう。
DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)患者さんを受け持ったら、カリウムに注意
DKAではアシドーシスが進んでおり、見かけ上は血清カリウム濃度は上昇しているように見えるが、インスリンを投与してアシドーシスが補正されると一気に血清カリウム濃度が低下してしまい、致死的不整脈が生じることがあります。DKAの治療関連死で、最も多い原因でもあります。
低値となる前の段階で、カリウムの補給が必要となります。
補正の開始タイミングと量については、各書を参考にしてください。
例えば、糖尿病専門医研修ガイドブックでは
治療開始0〜4時間:5mmol/L以下で10mEq/hで補給
治療開始4〜8時間:3.5mmol/L以下で考慮
というようになっています。
DKAとHHSの治療の違い
DKA:絶対的インスリン不足
→アシドーシス(細胞内飢餓)の改善がメインなので、アシドーシス改善されるまではインスリン治療は継続
HHS:インスリンの相対的不足
→脱水の治療がメイン
→必ずしもインスリンの静脈注射は必要ない
→必要時にインスリンの持続点滴
DKAとHHSの補液
DKAの補液
DKAの10%に脱水をともなっている→身体所見からは脱水を探すのは
難しい
もちろん脱水の補正も重要→過剰にやりすぎると肺水腫、心不全
なってしまうので要注意
(特に腎機能障害がある場合は注意→利尿がないので脱水になりにくい
HHSでは基礎疾患を合併していることが多く、死亡の原因になる場合があります。
→感染症、AMIなどの基礎疾患のチェックを忘れずに行いましょう。
発熱がなくても感染症は否定できないので、血液培養などは採っておきましょう。
脱水で血管が詰まりやすいので、AMI、脳梗塞などの血管病変には注意が必要で、その旨をICしておきましょう。