疼痛時指示
受け持ち患者さんへの指示簿指示などで
「疼痛時の指示」についてまとめます。
鎮痛剤として一般的な患者さんの指示で使われやすいのは
NSAIDsとアセトアミノフェンです。
まずはこれらの使い分けを、知っておきましょう。
NSAIDsとアセトアミノフェンの鎮痛作用について
アセトアミノフェンは、以前は400mgまでしか使用できませんでしたが
2010年から、1000mg/回まで投与できるようになりました。
もともと、海外では1000mgまで使用は可能で、
その容量で使用すると、NSAIDsと比較し
アセトアミノフェン NSAIDs
鎮痛効果 8 10
ほどの鎮痛効果があるとされています。
ただ、昔から400mgで使用している先生の感触としては、アセトアミノフェンは弱いかな、という印象が根強くあり、
アセトアミノフェンは使用されないことが多いです。
ですが、用量を増やせば鎮痛薬としての効果も十分あるため
痛みに効かないからNSAIDsというイメージはあまりオススメしません。
むしろ、副作用が少ないため、一般的にはまずアセトアミノフェンから使用を開始すると、安全な診療ができます。
NSAIDsの副作用
(がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインより引用)
NSAIDsは、副作用も多い薬剤です。
痛みがコントロールできない患者さんであれば
得られる利益>副作用 という状況として
NSAIDsの使用は、当然妥当な選択です。
しかし、アセトアミノフェンでコントロールできる痛みであれば、
NSAIDsの方が副作用が問題になることが多いです。
アセトアミノフェンの副作用
アセトアミノフェンに副作用が全くないかというとそうではなく、
特に高容量では肝機能障害に注意が必要です。
肝障害のある患者さんや、飲酒家などでは、投与に注意が必要な場合があります。
NSAIDsを使いにくい患者さん
まずは、腎機能障害の患者さんです。
急性腎機能障害の2〜3割は、薬剤性の腎機能障害という報告もあります。
(Drugs cause approximately 20 percent of community-and hospital-acquired episodes of acute renal failure)
http://www.aafp.org/afp/2008/0915/p743.htmlより
NSAIDsは、色々な機序で腎機能障害を生じますが
その1つに血行動態による影響があります。
・脱水
・心不全
・敗血症
・基礎となる腎障害
のある患者さんでは、、腎臓への血流維持のために、プロスタグランジン合成が亢進しているのですが
NSAIDsによりこの合成を抑えられてしまうため、腎臓への血流が低下し、腎機能障害が発生します。
また、心疾患・心血管リスクのある患者さんでも要注意です。
Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials
(http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)60900-9/abstract)
Lancetでのメタ・アナリシスですが、心血管リスク・心不全リスクは注意すべきものです。
Coxibとは、コキシブ系と言われ、日本ではセレコキシブ(セレコックスR)です。
また、消化管出血などのリスクがあります。
高齢者の患者さんなどで、発熱時にNSAIDsを使用すると、血圧低下を起こす方も時々居ます(アナフィラキシーとは異なる機序で)。
使用する際は、それらの点を注意する必要があります。
NSAIDsの優れているタイミング
では、NSAIDsの方が優れているタイミングはどこか、というと
炎症を伴う疼痛の際
です。
炎症とは、
見て赤いか、腫れているか
触って暑いか、押して痛いか
という4つの兆候(発赤・腫脹・熱感・疼痛)を持った熱のことです。
アセトアミノフェンとNSAIDsの違いに
抗炎症作用があります。
痛風や偽通風・リウマチの急性期などには、NSAIDsの方>>アセトアミノフェンで、
NSAIDsの方が良い適応です。
炎症のない疼痛時の指示としては、アセトアミノフェンの方が安全なことが多いため
NSAIDsが果たして必要か、十分に検討しましょう。
