蕁麻疹への診療アプローチ
蕁麻疹は、上図のような、
蚊に刺された後のような痒みのある膨らみが全身に出る病気です。
医学的に表現すれば(カルテに書く皮膚病変の表記方法としては)
紅斑を伴う皮膚組織の一過性・限局性の浮腫(膨疹)が病的に出没する
通常は淡紅色で、わずかに扁平に隆起する。多くは掻痒を伴い、消失後は痕跡を残さない
となります。
上記のような皮疹で、かゆみがあり、消失後は痕を残さず消える というのが蕁麻疹です。
まずアナフィラキシーでないかどうか判断する。
蕁麻疹と判断したら、まず大事なことは、アナフィラキシーとなっていないかどうかです。
その理由は、アナフィラキシーの症状として、蕁麻疹はとても多く、アナフィラキシーは初期治療が遅れると、致死的になりうるからです。
アナフィラキシーの症状(J Allergy Clin Immunol, 115(3), 2005)
・皮 膚: 蕁麻疹、血管性浮腫 85-90 %
紅斑 45-55 %
・呼吸器: 呼吸困難、wheezing 45-50 %
上気道血管性浮腫 50-60 %
鼻炎 15-20 %
・循環器: めまい、失神、低血圧 30-35 %
・消化器: 嘔吐、下痢、腹痛 25-30 %
・その他: 頭痛 5 - 8 %
胸痛 1 - 6 %
痙攣 1 - 2 %
このように、アナフィラキシーでは蕁麻疹を起こしていることが多いです。
※逆に言うと、皮疹のないアナフィラキシーショックは非常に診断が難しいです。そういうこともあるという認識はとても重要です。
アナフィラキシーを起こしている場合は、アナフィラキシーへの対処が必要になります。
蕁麻疹で、アナフィラキシーがないか疑った時のABCD
蕁麻疹患者さんを見たら、まずはこのABCDをみます。
A : airway →上気道浮腫
・後咽頭/口蓋垂の浮腫
・喉の締め付け感
・嗄声
B : breathing →喘息 Wheeze
C : circulation →ショック
・血圧低下
・めまい 失神 けいれん
D : diarrhea →下痢 腹痛
これらの項目に当てはまらないかどうか、詳細に問診しましょう。
これらで、アナフィラキシーでない状態でないことを確認します。
アナフィラキシーであった場合の治療手順
1.エピネフリン :ボスミンR等
作用発現まで筋注約8分 皮下注約35分
2.H1ブロッカー :ポララミンR等
作用発現まで1〜3時間
3.ステロイド:メチルプレドニゾロン・ヒドロコルチゾン等
(アスピリン喘息には使用できないため注意)
作用発現まで4〜6時間
蕁麻疹の原因・機序
何らかの刺激により皮膚のマスト細胞が脱顆粒し、
活性物質(ヒスタミンなど)が放出されて皮膚の微小血管の拡張と血漿成分の漏出
痒み伝達性の知覚神経を刺激して掻痒を生じます。
なので、蕁麻疹のみで軽症であれば、抗ヒスタミン剤が第一選択となります。
蕁麻疹患者さんに、注意を促す点
蕁麻疹の可能性が高いです。
アナフィラキシーショックといって蕁麻疹の最重症タイプには現時点では至っていないと考えます。
内服で経過観察としますが、呼吸困難・ふらつき・咽頭掻痒感・下痢などの症状を認める場合は
悪化している可能性が考えられますので早急に受診してください。
抗ヒスタミン薬の注意点
・抗ヒスタミンには鎮静作用があります。
・鎮静作用には眠気とインペアード・パフォーマンスがあります。
眠気は有名ですが、インペアード・パフォーマンスも知っておきましょう。
インペアード・パフォーマンス(作業効率の低下)
眠気を感じていなくても認知機能の低下の可能性がある状態
・実際に問題となるのは自動車運転時
→抗ヒスタミン薬を処方時は自動車運転を行うかどうか
確認する必要がある。
抗ヒスタミン薬の添付文書における運転注意の記載について
記載なし:アレグラR、クラリチンR等
注意させる:アレジオンR、エバステルR、タリオンR等
従事させない:セルテクトR ザジテンR ジルテックR アレロックR等
蕁麻疹の原因
食べ物・薬・日光・花粉・ほこり・細菌・ウイルス・圧迫・摩擦・運動・ストレス・寒冷刺激・発汗など
様々なことが原因となるが蕁麻疹患者の約7割が特発性(原因不明)の蕁麻疹です。
原因は分からないことが多いということを初診医が伝え、皮膚科に相談しましょう。
