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再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis)とは

再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis)とは軟骨の炎症が反復する稀な疾患で、外耳・鼻・喉頭・気管気管支などの軟骨がある部位を主病変とする疾患です。その他にも、耳介・眼・皮膚・内耳に病変が出ることや、血管壁への炎症をおこす(血管炎を起こす)場合もあります。

 

 

かつては予後の悪い疾患とされていました。しかし最近では、この疾患の認知度が総合診療の分野などで上がり、診断が早くなってきたことも影響しているのか予後が改善してきています。再発性多発軟骨炎は希な疾患で、有病率 4.5人/100万人とされています。

 

 

白人の報告例が多いですがが、全民族で起こりうる疾患であり日本でも見つかります。全年齢で起こりますが、比較的中年発症が多く、発症年齢の中間は43歳ほどと報告されています。男女比はほぼ同数〜女性にやや多いです。

 

 

家族発症例は極めて稀で、母子での発症も1例で報告があるのみです。

 

 

 再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis)の臨床症状

参考:Kelley and Firesteins Textbook of Rheumatology, 2-Volume Set, 10th

 

臨床的な特徴は軟骨炎で、患者の2/3以上は軟骨のある耳の疼痛、発赤、腫脹を伴います。

 

耳の軟骨がある部分は赤く腫れ痛みますが、耳たぶは軟骨がないため病変が起こらないというのは特徴的な所見で、診断に有用な所見です。片側にも両側にも起こり、自然経過としては数周以内に自然に解決しますが、それを繰り返すと軟骨が変形し、カリフラワー状の変化を起こします。
耳の変形(カリフラワー状変形)

 

耳の炎症は特徴的ですが、必ずしも初期から全例で診られるわけではなく、病初期には40%程度にしか認めず、経過中に見つかるという場合も多く、最終的には85%ほどの患者で診られるという報告があります。

 

 

鼻の軟骨炎もおこし、鼻の変形が進行するとsaddle nose変形をきたします。
鼻の変形(saddle nose変形)

 

 

再発性多発軟骨炎では、臨床的に絶対に評価を忘れてはいけない部位が上気道です。再発性多発軟骨炎は気道軟骨にも病変を来たし、上気道がやられると致死的になるため病気の初期段階で必ず評価すべきとされています。

 

再発性多発軟骨炎の約50%で呼吸器症状があり、呼吸器症状は予後不良因子です。嗄声、発声困難、持続性のdry cough、前部の頸部圧痛は喉頭や気道病変を示唆するかもしれない所見であるため注意しましょう。

 

気管-気管支の炎症は気管軟化症・気管の閉塞・急性呼吸不全を導きます。そして、繰り返す炎症のエピソードは声門下狭窄、慢性呼吸不全になり、感染リスクが増えます。

 

もう一つ上気道で注意するのは、気道過敏性の亢進です。挿管や気管支鏡の操作に伴い閉塞が誘発されることがあるので注意しましょう。

 

また、肋軟骨炎が進行すると胸痛が出て、胸痛症状が呼吸を悪化させる可能性も指摘されています。

 

 

心血管障害
血管壁の炎症を反映し、10%程に大血管と小血管の病気がおこります。大動脈の炎症は大動脈弓の根元におきやすく、大動脈瘤や大動脈閉鎖不全になるため、初期から超音波でベースラインの心機能と血管径の測定を行います。大動脈弁閉鎖不全症は、局所の炎症によるというよりは大動脈輪の拡大により起こるとされ、僧帽弁閉鎖不全症は弁の炎症や乳頭筋の筋障害から生じうる、とされています。また、心筋炎を起こす場合はそれが心不全や伝導障害を導くとされます

 

小血管のvasculitisも報告されており、皮膚・腎臓・精巣・強膜・蝸牛前庭に重篤な障害をきたすことがあります。

 

 

眼病変
眼病変は50%で起こり、Episcleritis(上強膜炎)scleritis(強膜炎) Uveitis(ブドウ膜炎)retinal vasculitisが多いです。眼神経炎はまれです。角結膜の乾燥は再発性多発軟骨炎にシェーグレンが合併すると起こります。外眼筋、眼周囲の浮腫、眼瞼下垂も起こりえます

 

 

腎病変
蛋白尿・血尿は26%以内で起きたという報告があります。腎病理上はmesangialproliferation and segmental necrotizing crescentic glomerulonephritisなどがみられ、電顕ではグロブリンと補体のdepositsが診られたという報告があります。ただし、これらの報告を鵜呑みにしていいかは不明です(これらのスタディーで合併する他の自己免疫疾患の影響について考慮しているか、という問題もあるので)
 
中枢神経障害・末梢神経障害
中枢・末梢神経障害は5%以下とされます。その中では脳神経症状がcommonですが、頭痛やataxia、hemiplegiaに加え、transverse myelitis、mononeuritismultiplex、aseptic meningitis、encephalopathyなど幅広く報告はあります。ただし、こちらもそれは合併した他の自己免疫によるかもしれません。

 

 

皮膚病変
皮膚症状は35%で起こるとされます。皮膚変化は骨髄異形成を伴う再発性多発軟骨炎でより起こりやすいとされます。口腔内潰瘍はよく見られる所見で、結節性紅斑に似た結節も約15%で認めれます。Magic syndromeと呼ばれるベーチェット病との合併する疾患概念もあり、これらの所見にも注意を払います。四肢末梢の潰瘍や livedo reticularisやpanniculitisはあまり診られず、また表在の静脈血栓や蕁麻疹やangioedemaもあまり診られません。

 

 

筋骨格筋症状
筋骨格症状は75%以上で認められます。関節にも軟骨はあるため関節炎は起こり、非びらん性で、Oligoarthritis(4つ以下の少ない関節炎)や多関節炎として出てき、足関節や手関節、手指や足趾の関節炎を起こします。

 

 

初期症状
再発性多発軟骨炎の症状や診断方法
参考:Arthritis Rheumatol. 2016 Dec;68(12):2992-3001. doi: 10.1002/art.39790.
ただしこの集計では集計の時点で以下の特徴がある方の集計です
?全患者に軟骨炎あり:耳介89%, 鼻63%, 喉頭 43%, 肋軟骨炎40%
?永続的な奇形を持つもの:鼻15%, 耳10%

 

 

 

再発性多発軟骨炎の診断基準|Michet’s criteria(

 Michet’s criteria(Ann Intern Med 104:74、 1986.) が使用されています。

 

大基準
耳介軟骨を含む炎症性のepisodeの証明
鼻軟骨を含む炎症性のepisodeの証明
喉頭気管支軟骨を含む炎症性のepisodeの証明

 

小基準
眼の炎症
聴力低下
前庭機能障害
Seronegativeな炎症性関節炎

 

大基準2項目 or  大基準1項目+小基準2項目で診断となります。
それらを満たす場合は、診断基準の中では組織学的検索は必須項目ではありません。

 

 

再発性多発軟骨炎と合併する他疾患

 

再発性多発軟骨炎は、他の自己免疫疾患や血液疾患を合併・背景として持っている方がとても多いです。

 

Pitie Salpetrie`reHospitalでRPと診断された患者142人の集計では、

 

自己免疫疾患の合併は22%で内訳は

SjS 9%
甲状腺炎 6%
SLE 4%
APS 3%
RA 2%
IBD 2%
SpA 2%

とあります。

 

また、血液疾患の合併は13% で
MDSがそのうちの66%を占めており、特徴としては男性で発症年齢が高めで、 皮膚合併症を持っている確率が高かった(MDSがある人は75%で皮膚病変、MDSがない人は25%で皮膚病変)と報告されています。その他の血液疾患として、リンパ腫を2.8%、骨髄増殖性腫瘍1.4%に認めています。

 

 

再発性多発軟骨炎の血液検査異常所見

再発性多発軟骨炎の検査には特異的な所見が少なく、診断的な価値は限られています。

 

発作時にはESR、CRPが上昇し、また炎症を反映し血小板増加、白血球増加、慢性疾患に伴う貧血が診られます。IgA, IgM, IgGのポリクローナルな増加や自己抗体がみられることもしばしばあります。

 

頻度は報告によりマチマチですが
CRP上昇は58%
ANCA上昇は11%
抗核抗体は21%
という報告もあります。

 

TypeII型コラーゲンに対する抗体は感度・特異度とも良好とはじめは報告されましたが、現在はそれほどともいえない状況で、感度50%以下(活動期にはこれよりは高いと報告)されており、現在も研究が行われています。現在もう一つ注目されているのは抗matrilin-1抗体ですが、いずれもコマーシャルベースでは測定できません。

 

 

再発性多発軟骨炎の予後ー3つのクラスターに分けて考える方法

再発性多発軟骨炎を3群に分け、予後を比較した研究では

MDSや心血管障害のある群
気道合併症群
女性・寛解群

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.39790/full
の3群に分けて比較した、というStudyです。

 

hemotologicphenotype (cluster 1)は全体の9% (n=12)で、下記の特徴があり
?死亡率58%, ICU入室率50%
?男性、高齢発症が多く含まれる
?MDS(83%), 全身症状(83%), 皮膚合併症(92%), 心血管障害(58%)

 

resperatoryphenotype (cluster 2)は全体の26% (n=37)
?予後は中等度:死亡率13%、ICU入室率27%
?主に気管支障害(76%)や喉頭障害(68%)、呼吸機能障害(57%)
?免疫抑制剤使用者 (83%), 生物学的製剤使用者 (32%)が多い
?感染症の割合が高い(35%)、若年発症

 

mild phenotype (cluster 3):65% (n=93)
?mildな群では死亡率4%, ICU入室率2%で、長い寛解維持を出来ていた
?気管支障害(3%)、血液疾患(MDS合併2%、他血液疾患合併5%) 少ない
?合併症も治療の数も少ない

 

 

という3群で比較したところ
hemotologicphenotypeで圧倒的に予後が悪く、次いでresperatoryphenotypeが予後がやや悪く、mild phenotypeの予後は良いという結果でした。

 

 

再発性多発軟骨炎の病理組織学的所見

軟骨への炎症細胞浸潤(CD4+T細胞、マクロファージ、多核球)、と、毛細血管が表面から深部に入り込んでいる所見がみられることと、プロテオグリカンの消費によりマトリックスの好塩基性がなくなるという所見があれば再発性多発軟骨炎が示唆されます。

 

再発性多発軟骨炎の病理像

 

 

再発性多発軟骨炎かな?と考えた時に、そこから進める鑑別診断

耳介軟骨炎の鑑別
感染性軟骨周囲炎との鑑別が必要ですが、感染の場合は、軟骨のない耳朶も赤くなることで区別されます。また変形した耳病変に関しては、らい病、リーシュマニア、ラグビー選手の外傷などで変形することが知られています。

 

 

Saddle-nose変形の鑑別
鞍鼻を呈する疾患である、Wegener肉芽腫症(Granulomatosis with polyangiitis)が重要な鑑別となってきます。PR-3ANCAや肺・腎や皮膚を診て血管炎らしい所見(血尿や変形赤血球、赤血球円柱など)がないかを評価します。
・副鼻腔炎
・肺病変
・多発単神経炎(振動覚・必要時の生検)
・糸球体血管炎(血尿・変形赤血球・赤血球円柱)
・PR3-ANCA
を探しましょう。

 

先天性梅毒、外傷、鼻中隔穿孔などもSaddle-nose変形を来す場合があります。

 

 

 

再発性多発軟骨炎の診断に有用な検査

診断に役立つ検査として、軟骨生検と、CTやMRIによる仮想気管支鏡という方法があります(実際の気管支鏡は攣縮のような閉塞を起こし危険な場合があります)

 

吸気ー呼気のCT撮影も有用な方法です。軟骨炎により、気道軟骨の支持力がなくなり、吸気時に喉頭が虚脱し、呼気時に気管が虚脱するという所見が得られ、特異的です。

 

また造影MRIや造影CTなどで、気管~気管支のびまん性の壁肥厚や軟骨自体の炎症が評価出来る場合があります。

 

 

再発性多発軟骨炎の治療方法

治療は、症例の少なさから経験的なものがほとんどです。NSAIDsやステロイドの他、Dapsonが致死的でない炎症で使われたり、コルヒチンが耳の軟骨炎に使われることがあります。潜在的に致死的な病気の存在や重症の軟骨炎ではプレドニン1mg/kgを使い、炎症が弱まれば漸減していく。という免疫抑制療法が選択されます。

 

この疾患は、熱源がはっきりしない発熱で耳を診るだけで解決することや、将来外科系に進む人でも気道過敏性という病態を知り、挿管などの呼吸管理を気をつけたり、耳鼻科や眼科に進む人にとっても所見としてみられる確率のある疾患なので、知っておくと将来に役立つかもしれません。

再発性多発軟骨炎の症状や診断方法