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産婦人科

妊娠と葉酸

 

妊娠をする前後では、葉酸の摂取が重要です。

 

葉酸の摂取により神経管閉鎖障害(neutral tube defects)の合併率を下げる働きがあり
厚生労働省も葉酸を摂取するように推奨されています。

 

神経管閉鎖障害(neutral tube defects)とは

神経管閉鎖障害(neutral tube defects)とは、背中を走る大きな神経や脳を作る『妊娠4週〜6週ごろ』に起きる、胎児の先天異常です。
二分脊椎や無脳症などの病気を総称し、神経管閉鎖障害と呼びます。
二分脊椎では、症状の重さにもよりますが脚の麻痺や、自分で尿を出したりする排泄の障害が起こってくることがあります。
先天性の奇形で2番目に多く(1番は心臓の奇形)病気です。

 

 

葉酸摂取(サプリ等)や、食事での葉酸摂取を強化

神経管閉鎖障害の予防のため、葉酸のサプリメントや、食事での葉酸摂取を強化することで、神経管閉鎖障害の発生率を下げることが出来るとされています。

 

そのため、例えばUp to dateなどの文献中では、
「recommended for women planning pregnancy or capable of becoming pregnant」・・・と
妊娠を予定している女性や、妊娠の可能性のある全ての女性に推奨するとされています。

 

 

葉酸とは

葉酸は、水溶性のビタミンであるビタミンB9のことです。
水溶性のビタミンで、牛のレバーや葉野菜、オレンジなどに多く含まれている成分です。

 

食事にも含まれている成分なのですが、摂取方法として、サプリメントなどで摂取した場合も、
吸収や体内での利用も良いとされています。

 

むしろ食事由来のものは、調理方法(生なのか加熱調理なのか)、どのように調理されたか、吸収の個人差などによって異なってくるため、安定した摂取については、(特に妊娠開始前後においては)サプリメントの摂取が薦められています。

 

 

 

妊娠をするかもしれない年代は、葉酸を取るべき

葉酸補充は、神経管閉鎖障害のリスクを減らす、とされています。
特に、妊娠初期の期間に摂取するよう薦められています。
妊娠初期に摂取するべき理由としては、
“Because neural tube development/closure occurs within the first four weeks of embryonic life (ie, by six weeks of gestation) “
赤ちゃんの神経管の発達・閉鎖は、着床してはじめの4週間以内に起こる(妊娠周期でいうと6週)。つまり、着床してはじめの4週間が特に大事ということです。

 

 

しかし、全ての方で、この4週間以内に妊娠に気がついて葉酸を取るようにするのはとても難しいことです。(4週〜6週くらいで、初めて妊娠に気がつく人も多いため)
そのため、妊娠したことに気が付くころor産婦人科医の診察を受けるころには、だいぶ時期が進んでしまっているため葉酸摂取のタイミングは遅れてしまいがちです。では、

 

 

その前の時点でもうすでに葉酸補充を始めるべきであるとされています。葉酸の補充期間は、着床の1か月前から妊娠16週くらいまでが推奨されています。
Because neural tube development/closure occurs within the first four weeks of embryonic life (ie, by six weeks of gestation) and before many women know they are pregnant or meet with a clinician, folic acid supplementation should be started at least one month prior to conception and continue throughout the first trimester

 

 

では実際にどうすると良いかというと、多くの妊娠は、完璧に予定を組んで、というケースではないことが多いと思います(そういう場合もあると思いますが)
なので、すぐに妊娠するのかどうかにかかわらず、妊娠の可能性のある年齢の女性は葉酸を摂取しておくべきとする考え方があります。

 

 

 

 

葉酸の有効性の研究

 

葉酸の投与がしっかりと提唱されたのは、Lancetという雑誌で、.Lancet1991;338(8760):131.とかなり昔のものです。
かなり昔のものですが、それが重要であるとのことで、今にもとても役に立つ研究です。
United Kingdoms Medical Research Council Vitamin Study Research Group randomized, double-blind prevention trial

 

1817人のハイリスク妊娠(神経管閉鎖障害出産歴のある方)を対象としたランダム化比較試験(RCT)を、葉酸群(4mg)・葉酸以外のビタミン群・何もなし群・葉酸+葉酸以外のビタミン群の4つにわけ比較。この結果、葉酸を使用していた群で、神経管閉鎖障害を72%減らすことができた。

 

『葉酸を飲んでいた群では、70%のリスク減少効果があった』というのはこの論文が元となります。
(ただし、この論文では、神経管閉鎖障害のリスクが高い人達を対象に、4mgという高容量の葉酸をとった場合のリスク減少効果について言っていますので、注意してください)

 

 

4mgは、ハイリスクな妊娠での使用量なので、これがリスクの低い人達群での予防として適切な量かは議論が必要です。
(葉酸の適切量についてはまだわかっていません)

 

 

ただ、その後に葉酸の研究は進み、その中の1つに、0.4mg(400μg)ほどでリスクを36%減、1mgほどで57%減のリスク減少効果があるという報告があり、それが今の400μgが推奨されている根拠なのだと考えられます。

 

 

ちなみに、以前の妊娠で生まれた子が神経管閉鎖障害(NTD)であったり、母体が抗痙攣剤(バルプロ酸やカルバマゼピン)の内服をしている場合は、特にハイリスク群であり、妊娠前後の葉酸補充が推奨されています。

 

まだ、下記のような群もリスクが高い患者さんになります。

BMI>35
3親等内の家族歴
1型糖尿病
葉酸阻害の薬剤害の薬剤使用など

.

どのように摂取するべきか

用量は議論が残るものの、葉酸は摂取すべきというのが現在の基本です。
ちなみに、高容量の葉酸を、マルチビタミン製剤(色々な成分が入ったビタミン製剤)で摂取することは勧められていません。なぜなら、ビタミンAなどの過剰摂取を起こしてしまう可能性があるからです。

 

 

 

 リスクの高くない方の、妊娠と葉酸

1989年から1991年にかけて、アメリカ女性の葉酸摂取量は1日に平均230μgであり、これは妊娠中に必要な葉酸の量に比べ低いということが明らかになりました。そのため、400μg/日以上摂取するよう啓蒙活動とプログラムが始まりました。

 

 

特に、この時の研究でインパクトが大きかったこととして、
リスクの高いと考えられてきた群の女性だけでなく、
実際に生まれてきた神経管閉鎖障害(neutral tube defects)の母親の95%は、それまで既往や神経管閉鎖障害(neutral tube defects)児の出産歴や痙攣の基礎疾患は持っていない状態(いわゆるリスクの高くない群の方々)であった。

 

そのため、ハイリスクな状態がある母親だけではなく、すべての妊娠に関して着床前後の葉酸補充が推奨され、メタアナリシス(41個のスタディー)において、それは肯定されているようです。

 

 

繰り返しになりますが、未だ葉酸の最低量に関してはまだ分かっていないです。
しかし、
The United States Preventive Services Task Force (USPSTF) recommends that all women of reproductive age planning or capable of pregnancytake a supplement containing 0.4 mg to 0.8 mg of folic acid daily to reduce their risk of having a child with a NTD
葉酸を、1日あたり0.4mg(=400μg)から0.8mg摂取するよう推奨されており、実際に日本の厚生労働省も400μgが葉酸摂取量として推奨し、これくらいという目安となっています。

 

 

 

着床する前1ヶ月から葉酸補充をすすめ、妊娠16週くらいまでは葉酸の継続が望ましいというのが現在のコンセンサスになっています。
ですが、実際に実践できていないことも多いので、啓蒙していきたい部分です。